バイタルをとる時、清拭をする時、移動する時、ナースはあらゆる日常の場面で自然に患者さんに触れます。

寒い冬は自分の冷たい手を温めてから、患者さんに触れる前に不快を最小限にしようと配慮するナース。体位交換の際は、衣服を伸ばしながら圧迫した背中をさすってあげるナース。

これら「触れる」という行為は、多くの人の安全・安楽・苦痛を緩和するスキルです。

日常の看護ケアをさらによりよいものにしていける手段として、触れることの意味や効果を知って役立ててみませんか。

触れられていると感じるメカニズム

人が触れられていると感じるためには、表皮が刺激をキャッチして感覚受容器(触覚、圧覚、温覚他)を経て脳に伝わるといわれています。

皮膚の構造は、表皮(厚さ約0.2㎜)→真皮(厚さ約1.8㎜)→皮下組織からなります。

この表皮0.2㎜の厚さの中に、さらに4つの層(角質層→顆粒層→有棘層→基底層)があり、一番上の角質層にケラチノサイトという薄い膜(約0.02㎜)が存在します。

ケラチノサイトは、表皮の角質層にある死んだ細胞のことで、基底層で生まれたケラチノサイトが有棘層、顆粒層、角質層へ分化しながら上層し、最後は垢になって剥がれ落ちるサイクルを繰り返します。

この死んだ細胞である表皮のケラチノサイトが、触れられていると感じる最初のセンサーとして働きます。痛み、温度、圧力などの刺激があると、ケラチノサイト内の蛋白質TRPが活性化し電気信号を発生。そして複数の感覚受容器に伝達するという仕組みになっているのです。

触れられて感じる快の気持ちはオキシトシン

触れられた刺激が脳に伝わった後、ストレスを緩和するオキシトシンというホルモンが分泌されます。

オキシトシンは9個のアミノ酸からなるペプチドで、視床下部の視索上核と室傍核の神経分泌細胞で作られます。脳内で作られたオキシトシンは下垂体後葉に運ばれ血液中に放出されます。

この血中に放出されたオキシトシンは、主に母と子のきずなを強化し、子宮収縮、乳汁分泌を促す作用があることで良く知られています。

さらに分泌濃度の差はありますが、妊婦だけではなく老若男女すべての人に疼痛緩和、脈拍血圧のコントロール、心の安定などをもたらす効果があるといわれています。

このように皮膚は、触れられることにより循環器や内分泌、こころにも影響を及ぼしていると考えられています。

触れる行為には6つの意味があります。

清拭や移動等の身体介助以外で、触れる行為を実施する臨床場面がまとめられています。

1.関係を構築するとき

患者との信頼関係や親密関係を築き、深める。

2.相互理解を促すとき

患者の考えや気持ちを理解していることを伝える。

看護師側の伝えたいことを的確に理解してもらう。

3.励まし、支え、寄り添うとき

患者に「そばにいること」を伝え、精神的に支える。

4.不安を緩和し、安心感を与えるとき

不安が生じることが予測される場合に、不安をできるだけ小さくする。

5.苦痛を緩和し、快適さを与えるとき

痛みや倦怠感などの身体的苦痛、またそれによる「辛い」気持ちを緩和する。

たとえ一時的であっても、不安や苦痛などを忘れ、快適な気分になれることを意図する。

6.注意喚起を促すとき

注意を向けてもらうことを意図とする。

参考:著佐藤都也子「看護実践場面におけるタッチに関する検討」を一部改変。

これらは患者さんの文化や生い立ち、病態なども関係し、むやみやたらに触れたりせず、会話だけも十分に可能な場合もあります。

そのため触れる行為が適しているか否かはアセスメントをして考慮されてください。

「撫でる、さする、手を当てる」効果的な触れ方

患者さんに触れるとき、「撫でる、さする、手を当てる」などの手法を用いていると思います。

心地よい手の触れ方の基本は、自分の手に相手を思う心を込めて優しくゆっくり触れることです。

タッチングの研究において、Ackerley R(アッカリー)氏の論文では、1秒間に約1cm~10cmのスピードで逆U字を描くように大きく長いストロークがリラックス効果を高めるといわれています。

1秒間に30cmを超えるような速い速度は交換神経を高めてしまうことになりますのでご注意ください。

また触れて良いか患者さんの了解を得ることで、より安心感が増し効果を高めることにつながります。

まとめ

看護ケアにおけるナースの心地よい手の触れ方の研究は、世界中で行われており、新しい知見が毎年更新されています。

ナースは臨床場面で、体位変換、清拭、移乗など患者さんに触る行為が頻繁に行われます。

そんな時、手の圧力や動作、タイミングを少し意識することで、患者さんにリラックス効果を生み出し、苦痛や不安を和らげる一助になるかと思います。

多くの患者の安全・安楽・苦痛を緩和し、QOLを高める援助をするナースだからこそ大切なスキルになりますので、ぜひ役立ててください。