高齢者が乾燥肌になるのは、老化による皮膚機能の衰えです。老化スピードは個人差がありますが、機能の衰えは病気ではなく誰にでもおこるもの。未だこの老化現象をとめる方法は解明されず避けることができない事実です。ここでは、直接的に乾燥肌をつくりだす3つの皮膚機能の衰えについて説明します。
表皮の一番上には、自然の天然クリームといわれる皮脂膜が覆っています。この皮脂膜のはたらきは、水分蒸発を防ぎ、皮膚の弱酸性を保つことです。構成は、「皮脂、垢、汗」からなるのですが、老化により皮脂や汗の分泌量が減り、天然クリームを必要量作りだせなくなります。その結果、水分蒸発が止まらず肌が乾燥してしまうのです。
表皮の角質層には、角質細胞間脂質という物質があります。この細胞間脂質のはたらきは、セラミドが主成分で角質の細胞と細胞をつなぎ、水分を蓄えることです。老化により細胞間脂質が減り、水分を蓄える能力が落ちてしまうため乾燥を助長します。
表皮の角質細胞の中にはNMF(Natural Moisturizing Factor=天然保湿因子)といって、その名のとおり天然で保水機能をもつ物質があります。NMFは、アミノ酸が主成分で、水分を捕まえて抱え込むはたらきがあるのです。老化によりNMFが減少し、水分を捕らえられなくなることで、角質細胞自体に水分が含まれなくなります。
「皮脂膜」、「角質間細胞」、「NMF」この3つの減少が肌の乾燥を引き起こし、バリア機能低下させるのです。乾燥が進むと、外部からの刺激がアレルゲンとなって掻痒感や炎症をおこし、放置すると重症化します。
そもそもこれら3つの物質は、皮膚の新陳代謝から生み出されたものですが、高齢になると真皮層からの栄養が少なく細胞分裂はゆっくりです。皮膚の力だけで潤いを取り戻すことは難しくなります。そのため、高齢者の皮膚のスキンケアで大切なことは、潤いを補充することと、僅かな表皮の水分をこれ以上逃がさないことです。
乾燥肌の改善には、自分の皮膚の特徴を知り、普段の生活スタイルを見直すことが必要です。ここでは、スキンケア指導で高齢者に求められるナースの関わり方を3つ紹介します。
高齢者の方は、悩んでいる自分をわかってくれる人にお話しをしてくれます。ナースは、傾聴して共感してこそ、大切な情報を共有することができるのです。本人に適したスキンケア方法を見つけるためにも、安心して話せる場や雰囲気をつくってあげてください。
「やればできるんだ」という自己効力感をもってもらいます。もし健康のために寒風摩擦をしていたとしても否定せず、行動変化が難しいところは後回しにしてください。本人が、これなら簡単に出来そうと思う優しい目標からはじめるのが効果的です。例えば、毎日ナイロンタオルと石けんで洗っていたところを、皮膚の休憩日をつくり、手と泡で身体を洗うことに慣れてもらうなど。
自分のことをしっかりみてくれる人に、フィードバックをもらおうとします。ナースは、あなたのことを気にかけていますよと伝え、本人が痒みや落屑などの変化に気づけるような会話をしてください。たとえば、手と泡で身体をあらってみてどうだったかなど、いろんなスキンケアに関する会話を継続します。自分の皮膚の乾燥状態、かゆみの程度を観察する習慣がつくられ、皮膚の異常があれば知らせる信頼関係ができます。
3つの基本ケアを紹介しますので、ご本人の生活スタイルに合わせて取り入れてください。
・洗浄成分は弱酸性の低刺激。
・泡石けんで、手でやさしく洗う。
・38~40℃程度のお湯が適温。
・入浴後、洗顔後の肌は、タオルで押して拭きとる。
熱いお風呂が好きな人や痒いからといってゴシゴシ洗う方が多いです。高齢で元気な人の中には、健康のために寒風摩擦を毎日して、タワシで頭を洗う男性もいます。本人を傷つけないよう言葉に配慮しながらお話を聴き、皮膚の薄さ(菲薄化)や落屑、痒みなど日常生活に問題があれば休憩をうながしてください。
入浴後、洗顔後の保湿は、早ければはやいほどよいです。保湿剤にはワセリンやオリーブオイルなど様々なタイプがありますが、落屑が多く、痒みがある場合は、医薬品を処方してもらうのがよいでしょう。
女性ですと自分に合った保湿剤を使用している方は多いですが、男性は保湿剤に内心抵抗をもつ方が多いです。先生に処方してもらい、「化粧品」ではなく「薬」という認識の方が、日常生活にスムーズに溶け込みやすいことがあります。
保湿剤を塗る時は、こすらず塗り拡げてください。ただし、足の裏は滑りやすいので、塗った後は靴下をはくなど転倒に注意しましょう。
・なるべく紫外線を避ける。
・ほこりなどアレルゲンを遠ざける。
・テープかぶれしないよう、低刺激性のものを選る。
・掻き壊しがないよう爪は短く。
・衣服や下着は、刺激が少ない綿などを選ぶ。
・カーペットやこたつは、乾燥しやすいですので、長時間の使用は控えましょう。
高齢者の乾燥は、重症化すると湿疹や強い痒みで、日常生活に支障をきたします。そうなってからでは、治療に時間がかかり、なかなか元の皮膚に戻りません。私たちの関わり方次第で、悪化を防ぐことが可能ですので、よい関わり方でスキンケア習慣が身につくといいですね。
]]>「スキンテア」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
「スキンケア」ではありません。「スキン”テア”」(Skin Tear)です。
「摩擦・ずれによって皮膚が裂けたり、剥がれたりする真皮深層までの皮膚損傷(部分層損傷)」のことを言います。
褥瘡とは異なり、まだ社会的に周知されていないため、時に“虐待”と間違われることがあります。
この2つの違いは原因と創の深さにあります。
「褥瘡」は持続的な圧迫とずれが原因で起こり、虚血性の障害であるため、壊死に陥ると骨まで深達することがあります。
「スキンテア」は一過性に強い外力が加わって発生する皮膚の裂傷で、原因は摩擦で起こり、創の深さは真皮深層までと浅いことが多いのです。
現在、全国・施設単位で様々な予備調査が行われており、スキンテアの傾向が少しずつ明らかになってきています。
発生時の状況をみると、医療用テープ剥離時が最も多く、車いす移乗時・体位交換・寝衣交換の身体支持、ベッド柵や車いすにぶつかる、転倒、寝衣・おむつ・点滴ルートによる擦れ、駆血帯使用時の摩擦などがあり、浮腫による皮膚の脆弱性も起因しています。
これらから、スキンテアはある程度、医療者のケアにより軽減できるものであることがわかります。柵にぶつけてスキンテアが発生している場合、「腕がだるいから」「肩が痛いから」ということが理由で、ポジショニングを検討後スキンテアが減った事例や、発話ができない方が「看護師を呼ぼうと思っていた」という事例もあります。
スキンテアも、他の疾患と同じように「なぜ起こるのか」という視点を持ってケアに取り組むことが大切です。
スキンテアが発生した時の対応、予防は具体的にどのようにすればよいのでしょうか?
現在、エビデンスを集積している最中で、まだケアとして確立されているものはありません。しかし、これまでの実践から、以下のようなことが推奨されています。
①出血を止める
血腫はコットン等を使用し丁寧に除去する
②皮弁を戻す
皮弁が食い込んでいるような場合は、生理食塩水を含ませたガーゼなどで柔らかくして戻す
③創周囲の皮膚を評価して適切なドレッシング材を選択する
④出血がなければ、頻回なドレッシング交換はしない。
⑤出血を伴っている場合は、創に固着せず、止血効果の得られるドレッシング材を使用する。
①ケア提供者が傷害を与えないようにする
②1日2回の保湿剤を塗布する
③皮膚保護材を用いる
④皮膚を摩擦から保護する
⑤水分を取ってもらう
塗布量の目安は、1FTU(1finger-tip-unit)で表されます。
チューブタイプであれば、人差し指の第1関節のところまで(約20~30mm) 、ローション剤であれば、手のひらに1円玉大が手のひら全体に塗る量に相当します。
各部位の塗布量は、
顔面・頸部→2.5FTU
片手両面→1FTU
片足→2FTU
上肢(手を除く)→3FTU
下肢(足を除く)→6FTU
胸と腹→7FTU
背と尻→7FTU です。
塗布した部位にティッシュを付着させて落ちない程度が適量です。
少なければ、薬剤の効力は発揮されません。塗布量は重要なポイントとなります。
また保湿剤を塗布するというケアは、思いの他、時間を要する印象がありますが、1回のケアに要する時間は「1分8秒」それを1日2回です。ケア提供者がタッチングすることで、認知症の患者さまが落ち着かれたという効果も報告されています。
ぜひ日々のケアに取り入れていただきたいと思います。
しかし、スキンテアはいくらベストなケアをしていても必ず予防でいるとは限らず、何をしても起こってしまう場合があります。
スキンテアが発生したことを責めるのではなく、エビデンスをもって最善の方法で速やかに治療すること、予防教育を再度検討することが重要です。
いま知っておきたい!「スキンテア(皮膚裂傷)」の最新情報:Expert Nurse 31(7) 2015
褥瘡ケア 認定看護師があなたの疑問をズバリ解決!:ナース専科35(7) 2015
スキンケアの技を極める!上達のコツを伝授!:ナース専科34(1) 2014
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