看護師はそんな認知症患者さんへの関わり方も十分心得ているかと思いますが、それでも対応に四苦八苦してしまう症例として「暴言・暴力がある患者さんへの関わり」が挙げられるのではないでしょうか。
認知症の症状として、記憶障害・見当識障害・徘徊・妄想・せん妄・幻覚・鬱・睡眠障害など様々ですが、その中でも暴言・暴力のある患者さんに対しては、治療に必要なケアも拒否が強く、全く何もさせてもらえなくてどうしたら良いのか・・と途方に暮れてしまうこともあるでしょう。
認知症の種類によっては、このような症状が出やすい場合もあるので、完全に攻撃性を失くすことは難しいかもしれませんが、看護師や家族である介助者の対応や、ちょっとした環境が症状を悪化させていることも多いのです。
そこをしっかりアセスメントして関われば、介入の糸口も見えてくると思います。暴言・暴力のある認知症患者さんへのケアについて解説していきます。
大きく種類は4つです。それぞれ疾患によって特徴があります。患者さんがどのタイプの認知症なのかを把握し、出現しやすい症状を理解しておくことは、患者さんへのケアを考える上で重要です。
側頭葉や後頭葉を中心に神経細胞の変性・消滅が起こります。「見当識障害」やもの忘れなどの「記憶障害」や「妄想」などが出現します。判断力の低下から介助の際に何をされるかわからないといった不安感や、できないことが増えてくると、できない自分への怒りから暴力行為につながりやすい。
脳梗塞や脳出血によって起こる認知症です。脳の障害されている場所によって症状が異なります。できることとできないことが比較的はっきり分かれます。性格の変化や、感情のコントロールができなくなって、感情の起伏が激しくなったりすることが暴言や暴力につながりやすい。
大脳皮質の多数の神経細胞内に「レビー小体」という特殊な変化が現れます。一見アルツハイマー型認知症と似ています。特徴的な症状として、アルツハイマーと似た認知障害に加えて、パーキンソン病に似た動作やバランスの悪さ、幻覚(幻視・幻聴)などが出現します。幻覚による恐怖感が暴言・暴力につながりやすい。
前頭葉と側頭葉の機能障害が攻撃性へと繋がりやすく、暴言・暴力は高頻度に出現します。
認知症の種類によって攻撃性は出現しやすくなりますが、次に述べるような要因も大きく関係してくることがあります。1つずつ見ていきましょう。
多くの場合、コミュニケーションが十分に取れていない時に起こりやすいです。コミュニケーションがうまくとれず、自分の思っていることがうまく伝わらないと不安になりそれが暴言や暴力行為につながることがあります。
スタッフ間で、どのようなケアの場面で起こりやすかを検討してみましょう。食事や入浴、更衣の場面などある一定の介助の際に起こるなら、その際の声かけや介助方法が不十分ではなかったか振り返ってみましょう。
認知症は、疼痛、不眠、便秘、掻痒感など身体の苦痛をうまく伝えることができず、その不快感を暴言・暴力といった形で表現してくることもあります。
短気で怒りっぽいといった元の性格が認知症によってより強く出てくることがあります。
介助者との信頼関係が築かれていないことで、不安感から攻撃性につながることがあります。特定の職員が介助にあたると暴言・暴力行為が出現するといった傾向がないかよく観察してみましょう。
入院による環境の変化も認知症患者によってはストレスになり、それが暴言・暴力につながることがあります。入院前は自宅でどのように過ごしていたのか、生活パターンはどんな風であったのか情報を取り直してみまよう。
観察ポイントにあるような点に注意して、要因がないかを探ってみましょう。観察ポイント①にあるように、介助の方法は重要です。
特に、患者さんのペースを守ることです。認知症患者さんは、理解力や判断力の低下から介助者の言っていることがすぐに理解できないことがあります。ゆっくりと時間をかけて説明し、決して看護師のペースで焦らせてはいけません。必要だからといって、患者さんの意に反するようなケアを押し付けたりすることも禁物です。普段の何気ない介助の中でこのような場面がないでしょうか。
また、観察ポイント②にあるように、患者さんの身体症状には常に気を配りましょう。何も言わないから苦痛がないのではなく、うまく訴えることができずにいることも多いのです。苦痛が軽減されることによってストレスも減って暴言・暴力が落ち着くこともあります。苦痛症状があるなら、それを軽減させるようなケアを取り入れてみましょう。観察ポイント④の人間関係もよくある要因です。
信頼関係を築くには時間もかかりますが、まずは介助する人を変えてみるのも良いでしょう。そして、環境調整も重要です。入院によって自宅と環境が違ってくることは仕方のないことですが、生活パターンの変化についていけないことも認知症患者さんにとっては大きなストレスです。
家族にどのように自宅で過ごしていたのかを聞いてみましょう。できるだけ普段の生活パターンに沿ったケアを考えてみましょう。何か日課としているような日常生活で気分転換が図れるような趣味があれば、可能な範囲で入院生活に取り入れていくことも良いでしょう。
暴言・暴力行為を起こしている最中は、できるだけ刺激をしないようにします。落ち着くまで、少し距離を置いてそっと見守るようにしましょう。介助者に危害が加わることもあるので、介助者の安全を守ることも大事です。一人で対処しきれない時は複数で関わることもあるかと思いますが、あまり多くのスタッフで取り囲んだりすると余計に興奮してしまいます。
また、ベット周りに刃物などの危険物があると自傷行為や他人を傷つけてしまうこともあります。あらかじめ危険物は置かないようにしましょう。また、薬物の使用も考慮されることがあります。しかし、薬物だけに頼るのではなくあくまで上記のような関わりをした上で薬物も効果的に使用していくことが大事です。
患者さんの安全を守るという点から拘束をしたりすることもあるかもしれませんが、症状を悪化させることが多いので安易に行ってはいけません。また、患者さんの訴えを無視したり、反抗的な態度で言い合ったりすることも余計に興奮させることになるので控えましょう。
観察ポイントにもあるように、まずは要因を見つけることが重要です。暴言・暴力行為につながる要因は、同じ認知症患者でも、個々の性格や生活背景や今まで生きてきた環境等によって違ってきます。看護師は、認知症患者さんが抱えている不安を十分理解する姿勢を常にもってケアにあたる必要があります。
]]>また、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患すると予測されています。現在の医療現場でも、認知症を患っておられる患者さんと関わる機会は多いのではないでしょうか。
そんな認知症の患者さんに対して実践されてる「バリデーション療法」を皆さんはご存知でしょうか?今後の超高齢化社会において、さらにその必要性や役割が期待される「バリデーション療法」について解説していきます。
バリデーションとは、1963年にアメリカのソーシャルワーカーであるナオミ・ファイル氏によって提案されたアルツハイマー型認知症および類似の認知症の高齢者とコミュニケーションを行うための方法の一つです。
バリデーションとは元々「確認する、認める、強くする」の意味を持っています。「認知症の人の経緯や感情を認め、共感し、力づける」という意味でバリデーションとという言葉を使っています。
バリデーション療法はアメリカやスウェーデンを中心に1万を超える施設で取り入れられているといわれています。日本国内でも多くの施設で研修などが開催されており、看護師だけでなく、看護補助や介護士に対しての研修でも取り入れられています。
バリデーションとは、コミュニケーション技術です。コミュニケーション技術を活用することにより、患者さんの訴えや行動の裏側を理解しすることが目的となります。バリデーション療法を実践する際に最も重要なのは「傾聴」の姿勢です。認知症の患者さんにとって、「言葉」は中身のないただの「記号」になってしまうといわれています。
会話をしていて、私たちの言葉を聞いているように見えても、言葉を理解しているかどうかは判断が難しくなります。しかし患者さん自身が、自分自身の言葉で話をしている時は、自分の話を「聞いてくれる人」、「聞いてくれない人」の判断はされているのです。まずはしっかりと患者さんの話に耳を傾けることを忘れてはいけません。
患者さんが何かを訴えた時、例えば「誰かに見られている」と訴えた時、「そんなことないですよ。」「本当ですね、見られてますね」という返答をすれば、患者さんの感情を否定したり、誤魔化すことになってしまします。「どんな人に見られてます?」、「どこで見ていますか?」という返答により、患者さんの思いを教えてもらい、感情や気持ちに近づくことが「バリデーション」の基本となります。
感情や気持ちに近づくということは、その訴えの背景にある患者さんの思いの本質に近づくことができるのです。認知症の患者さん行動には全て意味がある行動であるとし、なぜそのような行動をとるのかと言う事を知ることこそが、バリデーションの基本です。そのためにも患者さんに「嘘をつかない」、「誤魔化さない」ということが大切なのです。
バリデーションには「14のテクニック」があります。
こちらの精神状態が不安定では患者さんの心と向き合うことはできません。
まず深呼吸などで気持ちを落ち着けましょう。
患者さんの質問に対して「はい、いいえ」で単純に答えるのではなく、いつ、どこで、誰が、どのように、何、なぜ、(5W1H)などの次に自由に回答できる質問をします。自由に回答できるようにすることで、患者さんの考えや思いを具体的に知りやすくなります。
患者さんの質問を声の大きさや口調も真似て繰り返し質問します。「これはもう必要ない」と言われれば、「これはもう必要ないんですね?」などのよう繰り返しましょう。患者さんは自分が言ったことを確認できると安心できるのです。
視線を合わせ、患者さんを長く見つめることで、安心感を与えることができます。
肩に手を置く、両手で頬を包み込むなど、患者さんに触れるということも患者さんに安心感を与えることができます。
最高、最低、最悪などの極端な表現をしましょう。極端な表現をすることで、感情を発散させる手助けになります。
⑦反対のことを想像させる
「誰かが私のお茶を飲んだ」の訴えに対しては「その人がお茶を飲まない時もあるんですか?」など、否定、肯定でもない、反対の事を想像させます。反対のことを想像させることは若い頃などに困難から立ち直った方法などを思い出の中から導き出すきっかけになります。
会話や質問を過去と結びつけましょう。過去で自分で行っていたこと、考えていたことを再び取り戻すことのきっかけになります。
何を言っているか聞き取れなかった場合などは、曖昧な表現によりコミュニケーションをとることは出来ます。
患者さんの好きな感覚(視覚、触覚、嗅覚など)を見つけ、それを連想させる言葉をコミュニケーションで活用します。好きな感覚を用いることにより、自分を理解してくれているという信頼関係、また好きという感情により、心地よさを与えることが出来ます。
高齢者は高音が聞こえなくなっている場合が多く、低い声ではっきりと話しかけることに注意して会話をすることが大切です。またゆっくりと落ち着いた口調で優しく語りかけることで安心感を与えることが出来ます。
昔好きだった音楽や歌は、過去を思い出させる良い刺激となり、気持ちを落ち着かせることにつながります。
相手の言葉だけでなく、表情や声の大きさ、また徘徊時などは一緒に歩き、立ち止まれば一緒に立ち止まる、などの行動も真似ることにより言葉以外のコミュニケーションを保つことが出来ます。会話と言葉以外のコミュニケーションは、より患者さんの気持ちを知るということ、また患者さんを理解することにつながります。
不穏な行動や言動がある時には、「愛されたい」「人の役に立ちたい」「感情を発散させたい」という人間的欲求のどれに当てはまるか考えましょう。患者さんの行動や言動の理由に知ることにつながります。
患者さんの状態に合わせて、これらの「14のテクニック」を使い分け、患者さんの思いや、行動の本質を知り、不安やストレスを取り除き、患者さんとの信頼関係を築くことにより安心感を与えることができるのです。これがバリデーション療法です。
患者さんの全ての行動や言動には必ず意味がある。自分自身の日々のコミュニケーションを振り返ってみてください。取り入れることができるテクニックは多いのではないでしょうか。
日本国内で「バリデーション療法」を積極的に普及している学会が、「公認日本バリデーション学会」です。2003年に「日本バリデーション学会」は設立され、2006年にはアメリカのオハイオ州に本部を置く、バリデーショントレーニング協会から「公認」を受け、「公認日本バリデーション学会」と名称を変更、日本で唯一公認団体となりました。
バリデーション療法の創設者でもある、ナオミ・ファイル氏を招いでの講演会を始め、全国各地でセミナーを開催しています。また「公認日本バリデーション学会」が認定する「バリデーション・ワーカー」の育成、資格審査を行っています。
「バリデーション・ワーカー」コースは、東京、大阪で開催されており、全6回(各2日の合計12日間)のスクリーニング後、実践実習、議題提出、筆記、実技試験により合否判定されます。バリデーション・ワーカー取得後は、さらに「バリデーション・グループリーダー」「バリデーション・ティーチャー」などスキルアップ資格もあります。
「バリデーション療法」は患者さんの本質を知るテクニックではありますが、これは看護師や看護補助、介護士だけに有効なスキルではありません。在宅で介護をする認知症患者さんのご家族にとっても非常に有効なスキルです。患者さんが在宅で安心して生活をするためにも、またその介護をするご家族にとっても気持ちを理解し、介護するということは大切です。
今後の超高齢化社会に伴い、認知症の患者さんも増加し、さらには在宅で介護を受ける認知症患者さんは急増します。「バリデーション療法」は、病院はもちろん在宅の場でも、看護師だけでなくご家族にも是非実践して欲しいスキルだと言えます。
認知症の患者さん行動には全て意味がある行動であることを今一度認識し、なぜそのような行動をとるのか、その行動の奥にある思いを知ることは、必ずより良い看護につながります。是非実践してみてください!
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日本国民の65歳以上の高齢者の中で認知症を発症している患者様は2012年の時点で約462万人。およそ7人に1人の割合です。
軽度の認知症患者も含めると4人に1人の割合で認知症患者がいます。
厚労省の発表によると2025年にはおよそ700万人前後が認知症となり、5人に1人が認知症となります。
認知症がとても身近なものとなりましたが、実際どのように対応したら良いか周知されていないのが現状です。
今後どのような対応をし、どのような治療及び予防をするかが問われることになると考えられます。
フランス生まれの認知症ケアです。
「ユマニチュード」は、下記の4つを基本とした人間の存在(尊厳)を主眼とした看護の手法の集大成が「ユマニチュード」と解説されています。
*見つめること
同じ目の高さで、正面から、近くから長く、視線を合わせ、対等であることを伝えます。
高齢者の狭くなった視野に入り、自分と相手を認識してもらうためでもあります。
*話しかける事
頻繁に、繰り返し、優しく、出来るだけ目を合わせながら、前向きな言葉で安心感を与えられるように。
これから行う行為、行っているときの気持ち、どんな良い結果だったかを伝えます。
例えば、入浴時…
「お風呂が沸いたんですが、入りませんか?今日は温泉の素を入れているから、とっても体が温まりますよ~」
「寒かったから、温かいお湯は気持ちがいいですね」
「お風呂に入ってさっぱりしましたね。手足も温かいし、温泉の素を使ったから、お肌が綺麗になりましたね」
*触れる事
体表面積の大きい肩や背中など、やさしく手を当てます。
手・腕・顔の特に重要な感覚器官を司る箇所は、親しい人以外に急に触られると、恐怖を感じてしまいます。私たちが友人と接するとき、それほど近くはないはずです。
背中を擦ったり、動きやすいよう手を添えたり、相手が安心できる工夫が必要です。
*立つこと(立つ様に支援すること)
認知症症状で、無為無動や興味の喪失、注意力の低下があります。
自力で立つことは、文字通り自立を促し、筋力低下、寝たきり防止の意味を持ちます。
立ち上がることで、視界が広くなり、頭に入る情報量を増やすことが出来ます。
「立つ」という行動は、出来る方が限られてくると思いますが、「見つめる事」「話しかける事」「触れる事」少し気にかけながら行う事が出来ます。
誰でも出来ることでもあり、看護を行う上で基本となるものがとても多い反面、日々の業務に追われて実行することが難しくなってしまう。
または、イマイチ効果が表れないと感じてしまう動作でもあると思います。
でも、もし、街中で徘徊している方を見かけたら。
突然認知症を診断された家族への指導を行うとしたら。
「見つめる」「話しかける」「そっと触れる」これらは相手に接するときに必要な技術です、と伝えられれば、カッコイイ?し、自分が行う動作に知識や意味を持たせることは、不安を拭い、相手に興味を寄せることに繋がります。
*娯楽
有限会社グローバルスタンダードは「機能訓練用パチンコ台」を開発し、各福祉施設に設置するというサービスを開始しました。
足踏み運動をしたり、握力訓練用グリップを握ったりすると、パチンコ玉が飛ぶ仕組みとなっているようです。
光ったり、画面に数字がそろったり、昔からある娯楽として興味を引くものがあります。
それに、ただ歩くだけでなく、歩くと何かオマケがついてくる等の楽しみがあります。
画面を見て考えながら、指先を動かすことも脳に刺激になります。
パチンコのほかにも、例えば、おしゃれが好きだった人に今日の洋服のコーディネートを決めてもらう。
歌を歌うことが好きな人に、懐かしの名曲から最近の名曲を聴いて手拍子をしてもらう。
自分の興味のあることに熱中することは、脳を動かすことに繋がります。
*口腔内
実は、認知症患者様は歯が少ないです。
健康な高齢者の歯の残存数が平均14.9本に対し、認知症の疑いのある人では、9.4本。歯を動かす(咀嚼)ことで脳が刺激され、感覚や運動、また記憶や思考、意欲を司っている部分を活性化しているのです。
少し固めに調理してみる、食後にガムを噛んでみる、もう歯が無くても入れ歯をはめて食事してもらう…など、認知症にならないための予防として取り入れられます。
*食事・生活習慣
食事は、世界的にもブームとなっている和食を中心に、野菜や魚を食べるようにします。
そのほかにも、コーヒー、ビターチョコレート(カカオ70%以上)、カレー(ウコンを追加してください)、ココナッツオイル、オリーブオイル等も認知症、さらには肥満防止や動脈硬化予防にも効果があります。
認知症ケアは、どれも根気や工夫が必要で、疲れてしまうことも多々あるかと思います。
「自分で行えるケアや工夫」について書きましたが、疲れる前に、上手に社会資源をつかい、みんなで患者を支えあうことが必要です。
施設や病院で療養している方、あるいは自宅で介護サービスを受けながら生活している方。
「ケアが必要な認知症患者」から「穏やかな性格のおじいさん」「しゃべる事が好きなおばあさん」に視点を変えてみると、看護生活も少し楽しくなるのではないでしょうか?
「やりたかった看護は何か」そんなことを考えながら、ケアに生かしていただければ幸いです。
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