看護スキルアップ!便秘症ガイドラインを知っていますか?

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皆さんは緩下剤の調整に苦慮し、排便コントロールに悩まれたご経験はありますか?

排便に関する看護を考えたとき、どのような看護を思い浮かべるでしょうか。

便秘症の疫学

慢性便秘は女性に多いものとされてきました。しかし、平成25年度以降の国民健康調査を見ると60歳以上では徐々に男女差がなくなり,80歳ではむしろ男性が多いことが明らかになっています。また,便秘患者の大半は高齢者です。高齢者のQOLを考えていく上で、便秘に対する看護介入は不可欠なものとなってきています。 

国内に便秘症ガイドラインがあるのをご存知ですか?

2017年、日本消化器病学会の慢性便秘の診断・治療研究会により作成されました。 

便秘の定義が変わる

ガイドラインでは、便秘症を次のように定義しました。

「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」

この定義では、体内に糞便が残っている状態、快適に排出できない状態という2つの要素があります。そして、毎日排便があっても、患者が残便感や不快感を示した場合には便秘症をして考え、治療の対象となると言うことになります。

治療には様々種類がありますが、その一つの内服療法について記します。

便秘症に対する内服療法について

ガイドラインで内服療法として推奨しているものに「上皮機能変容薬」「浸透圧性下剤」があり、「刺激性下剤」は頓用で処方することが勧められています。

代表的な薬剤として、「上皮機能変容薬」のルビプロストン(商品名アミティーザ)、「浸透圧性下剤」の酸化マグネシウム,「刺激性下剤」のセンノサイドについて記します。

(1)酸化マグネシウム

我が国で最も使われている緩下剤の1つです。便を軟化させ,硬便による排便困難症状が強い場合には有用です。腎不全患者や高齢者では投与中の血中マグネシウム上昇が報告されているため、投与中は血清マグネシウム値の測定が必要と言われています。

適正使用が肝心で,1日2 g以内に抑えなければならないこと、また,骨粗鬆症の薬との併用は難溶性のキレートを生成し薬剤の吸収を阻害することが報告されています。

また酸化マグネシウムは胃酸と膵液で活性化する必要があるため、プロトンポンプ阻害薬など胃酸分泌抑制薬を内服している場合や胃切除後では効果は低下することが報告されています。

(2)ルビプロストン

近年登場した新薬で、小腸で腸液の分泌を促進させることで排便を促す,新しい機序の分泌型便秘薬です。プロスタグランジン製剤であるため,妊婦では禁忌となります。

併用禁忌や注意薬はなく、長期連用しても電解質異常を来たすこともなく,腎機能異常患者にも安心して使えるとされています。主な副作用は嘔気と下痢で、嘔気は,投与量の減量,服薬タイミングを食事直後にすると軽減されるとされています。

(3)センノサイド

センノサイドなどのアントラキノン系下剤の作用機序は,腸管の筋間神経叢を強力に刺激するとされていますが,その詳細はあまりよくわかっていません。作用は極めて強力で,ときに強い腹痛とともに激しい下痢となることが多く、作用が強力なゆえに,薬剤耐性,精神的依存性,習慣性,便秘の消失などの問題点があります。ガイドラインでは必要なときに頓用での使用が勧められています。

<慢性便秘症の内服療法とその推奨頻度のエビデンスレベル>

1:強い推奨 2:弱い推奨 

エビデンスA~D:「質の高い」「中程度」「質の低い」「非常に質の低い」エビデンス

種類

一般名

推奨度

エビデンス

プロバイオティクス

B

膨張性下剤

 

カルボキシメチルセルロース

C

ポリカルポフィルカルシウム

浸透圧性下剤

a塩類下剤

酸化マグネシウム

1

A

クエン酸マグネシウム

水酸化マグネシウム

硫酸マグネシウムなど

b糖類下剤

ラクツロース

Dソルビトール

ラクチトールなど

c浸潤性下痢

ジオクチルソジウムスルホサクシネート

刺激性下痢

a アントラキノン系

センノシド

B

センナ

アロエ など

bジフェニール系

ビサコジル

ピコスルファートナトリウムなど

上皮機能変容薬

aクロライドチャネルアクチベーター

ルビプロストン

A

Bグアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト

リナクロチド

消化管運動賦活薬

5−HT4受容体刺激薬

モサプリド

A

漢方薬

大黄甘草湯

2

C

麻子仁丸

大建中湯 など

 

排便しやすい姿勢は『ロダンの彫刻 考える人』の姿勢

 人は座った姿勢になると恥骨直腸筋が引っ張られ、肛門もしまっているため便を通さないようになっています。排便の際は肛門が1センチ下がって恥骨腸骨筋が緩むのが正常の動きとなるので、ロダンの『考える人』のようなポーズを取ると排便し易いと言われています。

欧米人の正常便と日本人の正常便

便の性状を図るスケールに『ブリストルスケール』があります。

欧米人の場合、ブリストルスケール3〜5が正常とされますが、アジア人特に日本人は熟したバナナ型と言われるスケール4しか正常に感じないのだそうです。

スケール4の便がスムーズに出ることが完全排便ということになります。

ブリストールスケール4を目ざして、薬剤を調整したり姿勢の指導をしていくことが患者の満足感の向上につながっていきます。

 

【引用参考文献】

国内初の便秘症ガイドラインを読む:日経メディカル2018年1月号

中島淳:慢性便秘の診断と治療.日本内科学会雑誌 105 巻 3 号:平成 27 年度日本内科学会生涯教育講演会

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