看護師必見!注射薬の様々な単位の誤認による医療事故を防ごう

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問題

「アドナ70㎎をゆっくり静注して下さい」と医師より指示が出ました。

アドナ1Aは100㎎/20mlです。

あなたは、何ml注射器に吸い上げますか?

様々な薬剤の規格の意味を知ろう

液状の注射薬の規格には「△mg/〇ml」というような表示がされています。

△は主薬の薬効成分の量です。

 

主薬の量の単位としては、「㎎」が最も多いのですが、

薬剤の中には「μg」(マイクログラム=1/1000㎎)や「IU」

一方カリウム製剤などの電解質の注射薬では、「mEq」 という単位が使われています。

 

〇mlは、薬効成分を溶かしている溶液の量です。

なので、上記のアドナ1Aでは、主薬が100㎎を20mlの溶液で溶かしているという意味になります。

医師は注射薬のほとんどを薬効成分である主薬の量で指示をします。

 

看護師は、注射準備時には溶液として取り出さなければならないので意味をしっかり理解することが必要です。

粉末状の注射薬は主薬の薬効成分量のみの記載となります。

問題の答えは、次のような計算式で算出することができます。

20ml×70㎎/100㎎=14ml  →  アドナ70㎎=14mlを静注する

薬剤の様々な単位の意味

主薬の量の単位として一般的なのは「㎎」ですが、

中には「㎍」(マイクログラム=1/1000㎎)という小さな単位を使用するものもあります。

 

カリウム製剤などの電解質の注射薬では「mEq」という単位が使用されています。

電解質とは水に溶かしたときに電離してイオン(電気を帯びた原子)を生じる物質のことです。「mEq」はメックと呼び、milliequivalent(ミリグラム当量)のことです。

これは電解質液中のイオン(電気を帯びた原子)の電価を表す単位です。

 

「単位」あるいは「U」(Unit=単位)、「国際単位」あるいは「IU」(International Unit=国際単位)もあります。

「単位」「U」はともに「国際単位」を略したものです。

国際単位は生物製剤(生きている細胞が産生したタンパクから製造した薬剤のこと)を標準化するためにWHOが定義した生物学的力価の単位のことです。

 

代表的な生物製剤としてはインスリンがあります。

インスリンは「1ml=100単位」に調整されています。

ときに新人看護師は「単位」とつく薬剤の全てが「1ml=100単位」と誤解してしまうことがあります。

ヘパリンは「1ml=1000単位」であるように、それぞれの薬剤で1mlあたりの単位数は異なります。

液量に換算する際に必ず規格を確認するようにしましょう。

「mg」と「mEq」の関係

Naの原子量は23なので、1mEqのナトリウムイオン(Na+)は23㎎です。

またKの原子量は39なので、1mEqのカリウムイオン(K+)は39㎎です。

Clの原子量は35.5なので、1mEqのクロールイオン(Cl⁻)は35.5㎎です。

つまり、原子量によって1mEqあたりの㎎量は異なります。

したがって1mEqの Na++ Cl⁻からなる食塩(NaCl)は23㎎+35.5㎎=58.5㎎になります。

1g(1000㎎)の食塩水に含まれるNa+は何mEqかというと、1000㎎/58.5㎎=17.1となり、約17mEqとなります。

オーダリングシステムでの処方入力間違いによる医療事故

現在、電子カルテ化が進み、オーダリングシステムの入力間違いによる投与量の事故が増えてきています。

医療事故情報収集等事業 第36 回報告書による、実際に起きた15の事例と背景要因を見てみましょう。

 

 

事例が発生した医療機関の改善策としては以下のような対策がとられています。 

1)院内で採用している単位の周知

・院内では、散剤の入力は「g」表示であることを医局会で再通知する。

・インスリンを処方する際は、「mL」ではなく「単位」で処方する。

・フラグミン静注を処方する際は、「単位」数でオーダする・・・など

2)システムの改善

・インスリン製剤は「mL」による入力ができないよう薬剤オーダのマスタを変更した。

・ワルファリンの細粒薬は計算が複雑で投与事故が起こりやすいため、「ワルファリンK細粒0.2%」は電子カルテの投与リストから外すことにした。

・ 「100V」などの通常使用しない量の登録が電子カルテのシステム上で制御できないか検討・・・など。

3)入力時の確認

・処方を確定する前に処方内容を確認する。

・化学療法の新規薬剤開始時に内服用量決定時には、他の医師とダブルチェックを行う。

チェック体制の強化(共診する医師とのダブルチェック、看護師とダブルチェック、薬剤師とダブルチェック)・・・など

4)薬剤師間の相談体制

5)疑義照会時の医師の対応

・疑義照会に対し、医師は真摯に受け止め、処方内容を再確認する・・・など。

6)院内教育

・オーダリングシステムの有効な利用や単位の統一について、院内で十分な周知、教育など

「入力の際、画面表示される単位を確認する」

「単位間違いが起りやすいことを認識し、処方監査を強化する」ことが重要なのです。

 

【引用参考文献】

医療事故情報収集等事業 第36 回報告書

http://www.med-safe.jp/pdf/report_2013_4_R003.pdf

川村治子:医療安全ワークブック

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