ナースが混同しやすい用語「自立支援介護」と「自立支援医療」の話

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自立支援という言葉がよく使われるようになりましたが、似た用語に「自立支援医療」と「自立支援介護」があるのをご存じですか?

「自立支援医療」は、利用者さんの経済的な相談に役立つ制度のお話で、「自立支援介護」は、介護方法の方針となる用語です。頭に同じ「自立支援」がついて混同しやすいですが、その意味や使い方はまったく違うものですね。

そこで今回は、高齢者とかかわりの多い看護師さんのために、「自立支援医療」「自立支援介護」をそれぞれまとめました。いざというときのために、この機会に用語の再確認しておくと安心ですね!

「自立支援医療」とは?

医療費の自己負担額を軽減する目的で作られた制度で、その対象者は3つに分かれます。

種類

対象者

精神通院医療

精神疾患の治療を継続的に必要としている人。

更生医療

身体障害者の治療。

育成医療

身体障害児の治療(18歳以下)。

高齢者と関わる看護師さんには、精神通院医療が身近な制度ですので、覚えておくと便利です。

この制度は、通院治療が必要な精神疾患の人を対象に、1割負担まで軽減される制度です(※限度額は世帯の所得額に応じて決められています)。

たとえば、認知症の進行によって医療費にかかる負担が増加した場合、住んでいる市町村に申請して、指定の医療機関・薬局で利用できます。

認知症は医療と介護の両輪でケアしていく症状ですので、少しでも治療に専念できるように、お金の負担や不安を軽くするという意味では有用な制度ですね。

もしかすると、身近な利用者さんやご自身の家族も、自立支援医療が受けられる対象となるかもしれません。そんな時「それ何ですか?知らない」と慌てず、しっかり相談に乗ってあげて、専門職らしくアドバイスできるといいですね。

 

自立支援医療の詳細です。

・厚生労働省「自立支援医療制度の概要」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html)2019年6月アクセス

「自立支援」介護とは?

体力の回復や意欲を取り戻し、その方らしい生活を目指して行う介護になります。従来型介護のような、支援を必要とする方が「なされるがまま」といった受け身の支援ではないのが特徴です。

では、自立支援介護のケアとは、具体的にどういうものかをみていきましょう。

自立支援介護のケア内容

ケアの基本は、生活するために必要な「水分・食事・排便・運動」の4つを軸に、認知症や失禁の改善、普通食を目指します。

水分

人間が1日に必要とする水分1,500mlを目安にして、水分補給をしましょう。高齢になると気づかないうちに脱水をおこしている場合があり、こまめな水分摂取の習慣をサポートします。

ただ、糖尿病や心不全、経管栄養等は状況によって水分量を変える必要がでますので、この限りではありません。体重増加やむくみ、動機や息切れなどの狭心痛サインを見逃さず、体重測定の管理が重要です。

食事

咀嚼や嚥下の改善をサポートしながら普通食を目指しましょう。食が細くなる高齢者にとって、食事は栄養補給の手段となり、すぐに介護食に頼ってしまいがちです。食事を美味しく、生活のよろこびのひとつにしていけるよう求められます。

排便

できるだけ下剤をやめて自然排便を目指しましょう。先進的な取り組みの1つに、おむつゼロ運動があります。普通のパンツで生活ができるよう、ポータブルトイレからトイレへの移行をサポートしているケースです。

竹内孝仁教授(国際医療福祉大学大学院)が提唱したもので、実践する介護施設も全国に増えてきました。

歩行・運動

離床をうながし、リハビリをして、ADL回復を目指しましょう。個別の状態に応じて、体操やトレーニングマシンなどを活用した機能訓練が求められます。

自立支援介護の課題

自立支援介護のあり方については、業界・職能団体を含め、活発な議論がかわされている状況です。とくに、2018年度の介護報酬改定で、“要介護度を改善させた事業所に、介護報酬を高くする”インセンティヴ措置についてはホットな話題ですね。

支援を必要とする人の自己選択や自己決定の尊重が、自立支援の根幹にありますが、インセンティヴ措置によって、利用者の意に反して「QOLを無視したADL回復の促進が盲目的に行われる」と危惧する声があがっています。

加齢による機能低下は自然現象であるにも関わらず、無理に栄養をつけさせ、リハビリを重ねて歩行器で歩かせるといった、自立を強いる偏った支援は“尊厳を守る”とはいえません。こうした議論を踏まえ、精査されて仕組みが構築されるので、今後も注視していくことが重要です。

まとめ

「自立支援医療」は医療制度の話、「自立支援介護」は介護方針の話でした。用語を正しく理解して、利用者さんの相談や、スタッフ同士のスムーズな意思疎通ができるといいですね。

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『 科学的根拠に基づく 自立支援介護 』を学ぶセミナー

【参考】

「介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティヴ(参考資料)」

(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000175116.pdf) 2019年6月アクセス

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