絶対NG!浣腸の禁忌患者と見逃してはいけない3つのサイン

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「トイレで浣腸をたのまれ、直腸を穿孔させてしまった。」

ナースの浣腸による医療事故が減らないことから、今から10年以上前に日本看護協会から緊急安全情報がだされたのをご存じでしょうか。

浣腸の体位は「左仰臥位」でおこなうことが周知されていますが、実際の現場では、さまざまな体位で実施され、慣れてくると基本の技術がなおざりになってしまいがち。

日常できわめて頻繁におこなう業務だからこそ、「浣腸って危険と隣あわせだよね。」と再確認をこめて、浣腸後の見逃してはいけないサインと副作用をまとめました。

グリセリン浣腸で慎重投与する患者は多い

浣腸とは自然排便ができない場合や、手術や検査の前処置に、グリセリンを直腸内へ注入して排泄をうながす技術です。

グリセリンの浸透圧を利用して、腸管から水分吸収する刺激で蠕動運動させ、浸透作用により便を軟らかく膨らませて排泄します。

浣腸手技で気をつけること

浣腸の処置は、直腸の方向の確認疼痛の有無カテーテルの挿入の長さ注入時の抵抗を十分に確認することが大切です。

【手順のポイント】

・グリセリン液を40℃に温める

・左仰臥位をとる

・肛門より5~6cm挿入する

・チューブのストッパーを直腸内に押し込まない。

四肢不全麻痺で疼痛感覚のない方痔核ステロイドの服用中、下剤を常用している人は、もともと腸管粘膜が傷つきやすい状態なので事前の情報共有と慎重な対応が求められます。

慎重さが求められる患者についてまとめていますので、アセスメントや申し送りの参考にしてください。

【慎重投与すべき患者と理由】

慎重投与すべき患者

理由

腸管、肛門に炎症・創傷のある患者

出血を促し、グリセリンが吸収され溶血や腎不全を起こすおそれがある。

腸管麻痺のある患者

蠕動運動亢進により腹痛症状増悪の危険性がある。

重症の硬結便のある患者

効果が得られず、腹痛症状を増悪させるおそれがある。

重篤な心疾患のある患者

症状を増悪させるおそれがある。

乳児

患児の反応を十分に把握できず、過量投与に陥りやすい。

高齢者

過度の瀉下作用により体液量の減少で脱水等を起こすので、少量で開始するなど慎重に投与する。

妊婦

子宮収縮を誘発して流早産の危険性がある。

 

(医薬品医療機器総合機構PMDA医療安全情報 グリセリン浣腸の取扱い時の注意についてより一部抜粋・改編) 

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000022381.pdf

浣腸後に見逃してはいけない3つのサイン

浣腸後の重大な副作用とは、ショック症状と誤挿入による穿孔損傷です。

そのため血圧変動、感染兆候、溶血症状の3つの兆候を見逃さないようにしましょう。

血圧変動に注意!強制排便時のショック

強制排便時には迷走神経反射を誘発して心拍や血圧が下がるショック症状が発現することがあります。

【血圧変動の観察】

気分不快

ふらつき

冷汗

顔面蒼白

脈拍数減少

感染性の炎症!穿孔して腹膜内を汚染

ムリなチューブの押し込みで穿孔がおきると、グリセリン液と糞便が腹腔内に流出して炎症をおこします。

炎症程度は軽度な肛門周囲の疼痛から重度な腹膜炎まで、損傷部位によっては骨盤内膿瘍膀胱損傷といった事例もあり、絶食ドレナージ、ストーマ造設までおこなわれています。

【感染兆候の観察】

肛門部・会陰部の腫脹

発赤

熱感

発熱

腹部膨満

腹痛

穿孔

直腸壁を傷つけた!グリセリンが血中内で溶血

直腸粘膜を傷つけると、直腸や肛門の血管内にグリセリンが移行して溶血をおこすことがあります。

グリセリン液が血管内に入ると赤血球膜脂質量の低下、赤血球膜の代謝異常から溶血がおこり、血尿や急性腎不全までいたることも。

輸液や利尿剤、重度の場合は血液透析が必要の事例もあります。

【粘膜損傷と腎機能障害の観察】

肛門部出血

肛門部・会陰部の痛み

尿の混濁

血尿

尿量減少

無尿

浣腸の副作用症状の出現時間は、実施直後から数日後までさまざまなので、血圧変動や感染兆候、溶血症状のサインがあればバイタル測定をして速やかに対応しましょう。

絶対NG!浣腸できない禁忌患者

浣腸投与をしてはいけない禁忌患者は4タイプです。

すでに腸管穿孔や出血、腹腔内の炎症をおこしている患者

症状の増悪、グリセリンが血管内に吸収して溶血、さらには腎不全を起こすリスクがあります。

全身衰弱の強い患者

強制排便によりショックを起こすかもしれません。

とくに便秘が長く続いた高齢者への浣腸には注意しましょう。

下部消化管術直後の患者

蠕動運動が亢進して縫合部の離開や出血をまねくおそれがあります。

嘔吐や激しい腹痛が疑われる患者

症状の増悪を防ぎましょう。

まとめ

浣腸は危険と隣り合わせですが、手順を守ることと事前の情報共有で危険を回避することができます。

申し送りでは、浣腸に慎重さが求められる患者と禁忌患者を定期的におさらいしておくと安心ですね。

 

下記の文献サイトを参考に作成しています。

・医薬品医療機器総合機構 PMDA 医療安全情報 

http://www.info.pmda.go.jp

・日本看護技術学会 グリセリン浣腸 Q&A

https://jsnas.jp/system/data/20160427225748_qrxys.pdf

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大原 千佐子

看護師として整形外科で2年間務めた後、国際医療ボランティア団体に2年間所属。科にとらわれず広く浅くなんでもできるナースを目指して30床以下の病院で派遣ナースを6年。慢性期や終末期看護、訪問看護、フットケアを得意としています。

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