認知症ケア
日本国民の65歳以上の高齢者の中で認知症を発症している患者様は2012年の時点で約462万人。およそ7人に1人の割合です。
軽度の認知症患者も含めると4人に1人の割合で認知症患者がいます。
厚労省の発表によると2025年にはおよそ700万人前後が認知症となり、5人に1人が認知症となります。
認知症がとても身近なものとなりましたが、実際どのように対応したら良いか周知されていないのが現状です。
今後どのような対応をし、どのような治療及び予防をするかが問われることになると考えられます。
認知症ケア事情…「ユマニチュード」とは
フランス生まれの認知症ケアです。
「ユマニチュード」は、下記の4つを基本とした人間の存在(尊厳)を主眼とした看護の手法の集大成が「ユマニチュード」と解説されています。
*見つめること
同じ目の高さで、正面から、近くから長く、視線を合わせ、対等であることを伝えます。
高齢者の狭くなった視野に入り、自分と相手を認識してもらうためでもあります。
*話しかける事
頻繁に、繰り返し、優しく、出来るだけ目を合わせながら、前向きな言葉で安心感を与えられるように。
これから行う行為、行っているときの気持ち、どんな良い結果だったかを伝えます。
例えば、入浴時…
「お風呂が沸いたんですが、入りませんか?今日は温泉の素を入れているから、とっても体が温まりますよ~」
「寒かったから、温かいお湯は気持ちがいいですね」
「お風呂に入ってさっぱりしましたね。手足も温かいし、温泉の素を使ったから、お肌が綺麗になりましたね」
*触れる事
体表面積の大きい肩や背中など、やさしく手を当てます。
手・腕・顔の特に重要な感覚器官を司る箇所は、親しい人以外に急に触られると、恐怖を感じてしまいます。私たちが友人と接するとき、それほど近くはないはずです。
背中を擦ったり、動きやすいよう手を添えたり、相手が安心できる工夫が必要です。
*立つこと(立つ様に支援すること)
認知症症状で、無為無動や興味の喪失、注意力の低下があります。
自力で立つことは、文字通り自立を促し、筋力低下、寝たきり防止の意味を持ちます。
立ち上がることで、視界が広くなり、頭に入る情報量を増やすことが出来ます。
「立つ」という行動は、出来る方が限られてくると思いますが、「見つめる事」「話しかける事」「触れる事」少し気にかけながら行う事が出来ます。
誰でも出来ることでもあり、看護を行う上で基本となるものがとても多い反面、日々の業務に追われて実行することが難しくなってしまう。
または、イマイチ効果が表れないと感じてしまう動作でもあると思います。
でも、もし、街中で徘徊している方を見かけたら。
突然認知症を診断された家族への指導を行うとしたら。
「見つめる」「話しかける」「そっと触れる」これらは相手に接するときに必要な技術です、と伝えられれば、カッコイイ?し、自分が行う動作に知識や意味を持たせることは、不安を拭い、相手に興味を寄せることに繋がります。
楽しい!?認知症予防
*娯楽
有限会社グローバルスタンダードは「機能訓練用パチンコ台」を開発し、各福祉施設に設置するというサービスを開始しました。
足踏み運動をしたり、握力訓練用グリップを握ったりすると、パチンコ玉が飛ぶ仕組みとなっているようです。
光ったり、画面に数字がそろったり、昔からある娯楽として興味を引くものがあります。
それに、ただ歩くだけでなく、歩くと何かオマケがついてくる等の楽しみがあります。
画面を見て考えながら、指先を動かすことも脳に刺激になります。
パチンコのほかにも、例えば、おしゃれが好きだった人に今日の洋服のコーディネートを決めてもらう。
歌を歌うことが好きな人に、懐かしの名曲から最近の名曲を聴いて手拍子をしてもらう。
自分の興味のあることに熱中することは、脳を動かすことに繋がります。
*口腔内
実は、認知症患者様は歯が少ないです。
健康な高齢者の歯の残存数が平均14.9本に対し、認知症の疑いのある人では、9.4本。歯を動かす(咀嚼)ことで脳が刺激され、感覚や運動、また記憶や思考、意欲を司っている部分を活性化しているのです。
少し固めに調理してみる、食後にガムを噛んでみる、もう歯が無くても入れ歯をはめて食事してもらう…など、認知症にならないための予防として取り入れられます。
*食事・生活習慣
食事は、世界的にもブームとなっている和食を中心に、野菜や魚を食べるようにします。
そのほかにも、コーヒー、ビターチョコレート(カカオ70%以上)、カレー(ウコンを追加してください)、ココナッツオイル、オリーブオイル等も認知症、さらには肥満防止や動脈硬化予防にも効果があります。
認知症ケアは、どれも根気や工夫が必要で、疲れてしまうことも多々あるかと思います。
「自分で行えるケアや工夫」について書きましたが、疲れる前に、上手に社会資源をつかい、みんなで患者を支えあうことが必要です。
施設や病院で療養している方、あるいは自宅で介護サービスを受けながら生活している方。
「ケアが必要な認知症患者」から「穏やかな性格のおじいさん」「しゃべる事が好きなおばあさん」に視点を変えてみると、看護生活も少し楽しくなるのではないでしょうか?
「やりたかった看護は何か」そんなことを考えながら、ケアに生かしていただければ幸いです。
ケアスタッフ
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