五感をフル活用すればICU看護は怖くない!

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1. ICU(集中治療室)にくる患者さんは・・・

ICUには、内科系、外科系を問わず、呼吸、循環、代謝、その他重篤な機能不全の患者さんが来られます。

たとえば・・・

  • 心肺蘇生後の患者さん
  • 慎重な酸素吸入や、人工呼吸器を必要とする患者さん
  • 急性心筋梗塞、不安定狭心症、急性心不全、肺水腫など、循環動態が不安定な患者さん
  • くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、脳炎など、意識障害や痙攣をおこした患者さん
  • 開心術や開頭術など、手術の侵襲が大きい患者さん
  • 各種(神経原性、循環血流量減少、アナフィラキシー、敗血症性、心原性、外傷性)ショックの患者さん
  • 急性薬物中毒の患者さん
  • 急性代謝不全、電解質異常・失調、重症糖尿病患者さん
  • 急性肝不全、急性腎不全の患者さん

などなど、重症患者さんが多く、たくさんの医療技術や医療機器を使って全身管理を行います。

つまり、一時的にものすごく医療に依存しなければ生命が維持できない状態にある患者さんたちなんです。

2. ICUの看護は怖いの?

いいえ。怖くありません。

もちろん、重症の患者さんばかりですし医療機器に囲まれているので、緊張感も大きいし、勉強しなければならないことは多いです。

新人さんや異動後ICUに配属された方は、ICUという響きやそのイメージにびっくりしますよね。

でも、「怖いか?」と聞かれれば、決して怖くはありません。

なぜなら、心電図モニターや酸素飽和度(SpO2)モニターがついているからバイタルサインは常に分かる。

呼吸器がついていれば、呼気や吸気の状態や呼吸の回数が常に分かる。

心臓補助器械、人工心肺補助器械がついていれば、血圧や心拍出量や心系数が常に分かる。

水分出納のバランスを出しているので、輸液や輸血で体に入ったIN量、出血量や排液量、尿量で体から出たOUT量を常に把握できる。

というように、「常に状態を数値化できている」ので、患者さんの状態をアセスメントしやすいのです。

ですから、モニターや器械に慣れ、正常値、異常値などの数字に慣れれば、ICUは決して怖い場所ではありません。

むしろ、入院時、重篤で異常な状態の「数値」であった患者さんが、治療や私たちの看護で徐々にいい状態の「数値」になれば、患者さんが良くなっていることを自分の目で確かめ、その場で患者さんの改善を実感する事が出来るので、ICUは喜びを味わえる場所でもあるのです。

でも目だけでは、ICUの看護はできません。

実は見て、聴いて、感じて、五感をフル活用して、患者さんを観察することこそ大切なんです。

3. まずはおさえておきたいバイタルサイン

(1)呼吸

呼吸状態を観察するときは、「換気」(肺に空気を出し入れすること)と「酸素化」(空気中の酸素を血液に取り組むこと)という2つの要素に分けて、それぞれを個別に評価します。

呼吸を観察するときは、特に五感を生かすことが大事です。

  • 胸郭運動(深さや頻度)をよく見る。感じる
  • 呼吸音(湿性ラ音、乾性ラ音)、喘鳴をよく聴く
  • 人工呼吸器がついていれば、グラフィックモニターをよく見る
  • 血液ガスのPaCO2、PaO2の経過を見る
  • チアノーゼ(口唇や爪)の有無を見る
  • SpO2の数値を見る
  • 頻呼吸、努力呼吸、陥没呼吸、シーソー呼吸の有無を見て感じる
  • 冷汗がないか触る

(2)心拍、脈拍

患者さんに常についているモニター心電図をよく見ましょう。

  • 心拍数
  • RR間隔は規則正しいか
  • P波の有無
  • QRS幅が広いか狭いか
  • P波とQRS郡に関係はあるか
  • ・放置できない不整脈や致死的な不整脈は出ていないか

(3)血圧

疾患によって、適正な血圧は変わってきます。

例えば、脳血管疾患や心大血管疾患の患者さんは、高血圧が致命的となることがあります。

また、心機能が低下した患者さんの場合、低血圧が致命的となることがあります。

疾患を理解した上で、患者さんの血圧の変動をよく観察し、医師の指示した血圧の範囲内に、投薬でコントロールすることも私たちの大きな役割になります。

4. ICU看護師として心がけたいこと

私はICU、ERで11年間勤務しました。

配属された当初は、モニターや器械に囲まれた環境に緊張し、家でも勉強を余儀なくされ、毎日毎日疲弊していました。

日勤だろうと夜勤だろうと、どんどん入院は来るし、全く休憩がない時もありました。

物言えぬ患者さんもたくさんいました。

意識状態が悪く、不穏状態の患者さんに罵声を浴びせられたこともありました。

器械につながれ、10本くらい点滴や輸血とつながっている患者さんと接し続けました。

最善を尽くし、助かって欲しいと願っても、お見送りをした患者さんもいました。

時々、むなしく感じることもありました。

でも、嬉しいこともたくさんありました。

瀕死の状態で運ばれてきた患者さんでも、どんどん回復して、ご飯も食べて、一般病棟に転棟するまでになり喜びを分かち合いました。

自分の勤務帯に呼吸状態を良くしようと目標を決め、体位ドレナージを工夫した結果、血液ガスのデータがグンと改善したこともありました。

ICUの看護師は、イメージと違いとても地味な仕事だと思います。

でもそれでいいと思うのです。

ICUという環境は、器械やモニターの数値などに振り回されてしまいがちになることもありますが、看護師はその患者さん自身を見て、聴いて、感じて、看護をしていきたいものです。

患者さんは、一般病棟にいても、ICUにいても、私たち看護師と同じ人間です。

患者さんは、きっと誰かにとってかけがえのない存在です。

ですから、その患者さんの未来につなげられるような存在であれたらなあ、と思うのです。

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