患者の特性に応じた口腔ケアのポイント

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口腔ケアは、口腔内の清潔を保つために行われるケアの一つですが、汚れを取り除くだけの目的ではありません。また患者さんの状態に応じて、その手法や注意すべき点があります。

今回は患者さんの特性に応じた口腔ケアのポイントをまとめてみたいと思います。

口腔ケアの3つの目的

「口腔内の清潔維持」、「感染予防」、「嚥下機能の維持、向上」の3つが大きな目的となります。疾患や障害により、自分自身で口腔内の清潔が保持できない患者さんに対しては口腔ケアにて、口腔内の清潔を保持しなければなりません。

口から食事を摂取することが出来ない患者さんであっても、食事をしないということで唾液の分泌機能が低下し、乾燥、汚染の原因となります。口から食事が摂取出来ない患者さんに対しても、口腔ケアは必要になるのです。

口腔内の清潔を保つことが出来ないと、口腔内で繁殖する細菌などによる、肺炎や感染症の可能性も高くなってしまいます。また嚥下機能が低下することで、食物や唾液の誤嚥のリスクも高くなります。嚥下機能が低下している患者さんや、食事を口から摂取できない患者さんに対しては、口腔ケアが感染予防にも繋がるのです。

さらに口腔ケアによる口腔内の刺激、舌の刺激は嚥下機能の維持や機能向上にも効果があるといわれています。ブラシ等による舌や口腔内の刺激、口を開ける、噛むなどの動作は、嚥下機能を維持、機能向上のためのリハビリテーションとしての効果が期待できるのです。

口腔ケアには、単に口腔内の清潔を保つということだけではなく、様々な効果があります。口から食事をしていないからこそ、口腔内の清潔を保つことに注意する必要があります。口腔ケアの刺激は触覚、味覚などにも影響を与える為、認知症や寝たきりの患者さんに対しても良い刺激を与えてくれます。口腔ケアの目的を今一度理解し、口腔ケアに取り組んでみましょう。

口腔ケア時のポイント

①うがい(咳嗽)ができるか?

口腔ケアの際に、患者さんが「うがい」ができるか、できないかによって手順は大きく変わってきます。看護師による歯ブラシなどでのブラッシングの後、患者さん自身でうがいが可能であれば、十分な水でうがいをしてもらうことにより、口腔内を洗い流すことが可能です。

しかしうがいが出来ない場合には、水分の量に注意しながら実施することが必要になります。吸引、スポンジブラシ、ガーゼなどを使用し、水分を誤嚥しないように十分に注意しましょう。

口腔ケアの水分を誤嚥するということは、口腔内の細菌も一緒に誤嚥することになり、誤嚥性肺炎などのリスクが高くなってしまいます。必要以上の水分は使わず、また患者さんの口腔内の状態に合わせて、物品を選定しましょう。

②身体を起こした姿勢を保てるか?

身体を起こすことができれば、必ず上体を起こした状態で口腔ケアを実施するようにしましょう。臥位のままでの口腔ケアも可能ですが、誤嚥のリスクが高くなります。

身体を起こした状態を維持できるのであれば、ベッドのギャッジアップや、車椅子などを使用して身体を起こして口腔ケアを実施しましょう。身体を起こし、立位を保つということも患者さんにとっては良い運動刺激にもつながります。身体を起こした状態で、口腔ケアを行うことは、安全性や運動機能の刺激にもつながりますが、患者さんの状態を十分に理解し、無理のないように十分に配慮しながら実施しましょう。

③義歯を使用しているか?

義歯を使用している患者さんに対しての口腔ケアは、まず義歯を外し、口腔ケアを行います。患者さん自身で外せる場合は外してもらうように依頼し、外せない場合は看護師で外しましょう。口腔内は患者さんの状態に合わせて、使用する物品などを選定し、口腔ケアを実施します。

また義歯の清潔を保つことも大切です。義歯は非常にデリケートな物であり、また非常に高価な物でもあります。歯ブラシなどでゴシゴシ磨いてしまうと、傷や変形、破損の原因にもなってしまいます。ガーゼやスポンジブラシなどで、汚れを洗い流し、患者さんの身体の一部であることを忘れずにケアしましょう。

さらに義歯を乾燥させてしまうと、こちらも破損などの原因になってしまいます。患者さんや家族などと相談し、外しておく場合もどのように保管するか相談しましょう。義歯洗浄剤などがあれば、義歯をより清潔に保つことが出来るため、こちらも併せて相談しましょう。

④バイドブロックにて安全確保

口の開閉が困難な場合にはバイドブロックを使用する場合も多いかと思いますが、意識がはっきりしていない状態や、コミュニケーションが困難な場合にも、必ずバイドブロックなどを使用するようにしましょう。口腔ケアの際に看護師が指を噛まれてしまうことなどを予防するためでもありますが、患者さんの安全を守るためにも大切なことです。ブラシや歯ブラシを無意識のうちに強く噛まれてしまうと、患者さんの歯や歯肉などを傷つけてしまう可能性もあります。

また万が一、物品を噛み切られてしまった場合などは、異物を飲み込んでしまう可能性もあります。患者さんの安全を保つためにも、必要時はバイドブロックを使用して口腔ケアを実施するようにしましょう。

まとめ

口腔ケアは、簡単なケアに見えますが、その効果は大きく、また注意すべきことも多いケアの一つです。口腔内の清潔を保つということは、感染予防や嚥下機能の維持や機能向上につながり、患者さんにとっても様々な刺激を与えることが出来るケアです。口から食事をしていないから不要という物では決してありません。

患者さんの状態を十分に把握し、無理なく、安全に、患者さんに適した手法、物品を使用し、口腔ケアは実施しなければなりません。患者さんの状態は一人一人違い、口腔ケアのポイントも一人一人違うのです。在宅でのケアへつなげていく場合においては、家族への協力依頼や、指導も大切です。より良い口腔ケアの実践ができるように、頑張りましょう。

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