どう接したらいい?認知症で暴言・暴力がある患者さんへの関わり方

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

高齢化が進む中、認知症患者さんはどんどん増えています。病院に入院している患者さんも、内科・外科等の診療科に関係なく、認知症患者さんは必ずといっていいほど入院していると思います。

看護師はそんな認知症患者さんへの関わり方も十分心得ているかと思いますが、それでも対応に四苦八苦してしまう症例として「暴言・暴力がある患者さんへの関わり」が挙げられるのではないでしょうか。

認知症の症状として、記憶障害・見当識障害・徘徊・妄想・せん妄・幻覚・鬱・睡眠障害など様々ですが、その中でも暴言・暴力のある患者さんに対しては、治療に必要なケアも拒否が強く、全く何もさせてもらえなくてどうしたら良いのか・・と途方に暮れてしまうこともあるでしょう。

認知症の種類によっては、このような症状が出やすい場合もあるので、完全に攻撃性を失くすことは難しいかもしれませんが、看護師や家族である介助者の対応や、ちょっとした環境が症状を悪化させていることも多いのです。

そこをしっかりアセスメントして関われば、介入の糸口も見えてくると思います。暴言・暴力のある認知症患者さんへのケアについて解説していきます。

認知症の種類別の特徴

 大きく種類は4つです。それぞれ疾患によって特徴があります。患者さんがどのタイプの認知症なのかを把握し、出現しやすい症状を理解しておくことは、患者さんへのケアを考える上で重要です。

①アルツハイマー型認知症

側頭葉や後頭葉を中心に神経細胞の変性・消滅が起こります。「見当識障害」やもの忘れなどの「記憶障害」や「妄想」などが出現します。判断力の低下から介助の際に何をされるかわからないといった不安感や、できないことが増えてくると、できない自分への怒りから暴力行為につながりやすい。

②脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血によって起こる認知症です。脳の障害されている場所によって症状が異なります。できることとできないことが比較的はっきり分かれます。性格の変化や、感情のコントロールができなくなって、感情の起伏が激しくなったりすることが暴言や暴力につながりやすい。

③レビー小体型認知症

大脳皮質の多数の神経細胞内に「レビー小体」という特殊な変化が現れます。一見アルツハイマー型認知症と似ています。特徴的な症状として、アルツハイマーと似た認知障害に加えて、パーキンソン病に似た動作やバランスの悪さ、幻覚(幻視・幻聴)などが出現します。幻覚による恐怖感が暴言・暴力につながりやすい。

④前頭側頭型認知症

前頭葉と側頭葉の機能障害が攻撃性へと繋がりやすく、暴言・暴力は高頻度に出現します。

観察のポイント

認知症の種類によって攻撃性は出現しやすくなりますが、次に述べるような要因も大きく関係してくることがあります。1つずつ見ていきましょう。

①どのような場面で暴言・暴力行為が出現するか

多くの場合、コミュニケーションが十分に取れていない時に起こりやすいです。コミュニケーションがうまくとれず、自分の思っていることがうまく伝わらないと不安になりそれが暴言や暴力行為につながることがあります。

スタッフ間で、どのようなケアの場面で起こりやすかを検討してみましょう。食事や入浴、更衣の場面などある一定の介助の際に起こるなら、その際の声かけや介助方法が不十分ではなかったか振り返ってみましょう。

②苦痛や不快感などの身体症状はないか

認知症は、疼痛、不眠、便秘、掻痒感など身体の苦痛をうまく伝えることができず、その不快感を暴言・暴力といった形で表現してくることもあります。

③もともとの性格はどうだったか

短気で怒りっぽいといった元の性格が認知症によってより強く出てくることがあります。

④介助者(家族や看護師)との関係性はどうか

介助者との信頼関係が築かれていないことで、不安感から攻撃性につながることがあります。特定の職員が介助にあたると暴言・暴力行為が出現するといった傾向がないかよく観察してみましょう。

⑤入院前はどうだったか

入院による環境の変化も認知症患者によってはストレスになり、それが暴言・暴力につながることがあります。入院前は自宅でどのように過ごしていたのか、生活パターンはどんな風であったのか情報を取り直してみまよう。

⑥使用している薬剤の影響はないか

関わり方のポイント

観察ポイントにあるような点に注意して、要因がないかを探ってみましょう。観察ポイント①にあるように、介助の方法は重要です。

特に、患者さんのペースを守ることです。認知症患者さんは、理解力や判断力の低下から介助者の言っていることがすぐに理解できないことがあります。ゆっくりと時間をかけて説明し、決して看護師のペースで焦らせてはいけません。必要だからといって、患者さんの意に反するようなケアを押し付けたりすることも禁物です。普段の何気ない介助の中でこのような場面がないでしょうか。

また、観察ポイント②にあるように、患者さんの身体症状には常に気を配りましょう。何も言わないから苦痛がないのではなく、うまく訴えることができずにいることも多いのです。苦痛が軽減されることによってストレスも減って暴言・暴力が落ち着くこともあります。苦痛症状があるなら、それを軽減させるようなケアを取り入れてみましょう。観察ポイント④の人間関係もよくある要因です。

信頼関係を築くには時間もかかりますが、まずは介助する人を変えてみるのも良いでしょう。そして、環境調整も重要です。入院によって自宅と環境が違ってくることは仕方のないことですが、生活パターンの変化についていけないことも認知症患者さんにとっては大きなストレスです。

家族にどのように自宅で過ごしていたのかを聞いてみましょう。できるだけ普段の生活パターンに沿ったケアを考えてみましょう。何か日課としているような日常生活で気分転換が図れるような趣味があれば、可能な範囲で入院生活に取り入れていくことも良いでしょう。

暴言・暴力行為を起こしている最中は、できるだけ刺激をしないようにします。落ち着くまで、少し距離を置いてそっと見守るようにしましょう。介助者に危害が加わることもあるので、介助者の安全を守ることも大事です。一人で対処しきれない時は複数で関わることもあるかと思いますが、あまり多くのスタッフで取り囲んだりすると余計に興奮してしまいます。

また、ベット周りに刃物などの危険物があると自傷行為や他人を傷つけてしまうこともあります。あらかじめ危険物は置かないようにしましょう。また、薬物の使用も考慮されることがあります。しかし、薬物だけに頼るのではなくあくまで上記のような関わりをした上で薬物も効果的に使用していくことが大事です。

暴言・暴力がある時にとってはいけない行動

患者さんの安全を守るという点から拘束をしたりすることもあるかもしれませんが、症状を悪化させることが多いので安易に行ってはいけません。また、患者さんの訴えを無視したり、反抗的な態度で言い合ったりすることも余計に興奮させることになるので控えましょう。

まとめ

観察ポイントにもあるように、まずは要因を見つけることが重要です。暴言・暴力行為につながる要因は、同じ認知症患者でも、個々の性格や生活背景や今まで生きてきた環境等によって違ってきます。看護師は、認知症患者さんが抱えている不安を十分理解する姿勢を常にもってケアにあたる必要があります。

SNSでもご購読できます。

   

   

コメントを残す

*