要注意!冬場に流行る感染症、ノロウイルスとは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ノロウイルスは毎年11~2月頃に流行する胃腸炎の主要な原因ウイルスです。

食中毒原因ウイルスとしても知られていますね。

ノロウイルスに対する抗体は交差反応を起こしにくいこと、抗体の持続する期間が3カ月程度と短いため、1回罹患しても何回も繰り返します。

そのため、子どもから成人、高齢者の方まで幅広い年齢層に感染します。

感染経路は?

ノロウイルスは①排泄物を介した人から人への感染と、②カキなどの食中毒による二つの感染経路があります。

人から人への感染では、ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や糞便を触れた際に、消毒や手洗いが不十分な場合に経口感染します。

ノロウイルスは空中に浮遊する!

嘔吐物や下痢便が放置されていたり、処理の仕方が誤っている場合に、ウイルスを含んだ有機物(乾燥した嘔吐物や下痢便のかけら)やほこりが風に乗って舞い上がり、そばを通った人が吸い込んだり、その人の体に付着して、最終的に経口感染する場合があります。このような感染は、施設内での集団感染の原因になることがしばしばみられますが、特に病院の外来や、場合によっては病棟などではいつでも発生する可能性があり、注意が必要です。

1回の嘔吐物には約100億個のノロウイルスが含まれている!

 ノロウイルスは感染力が強く10~100個のウイルスで感染が成立します。1回の嘔吐物には約100億個のウイルスが含まれているため、少量の嘔吐でも十分に感染が成立することになります。

B型の人は感染しにくい?!

 ノロウイルスは感染する時、腸管の上皮細胞の表面にある組織血液型抗原がレセプターとして関与していると言われています。そのため、血液型ではA・O型の人が感染を受けやすくB型の人は感染を受けにくいのだそうです。

潜伏期間と症状

ノロウイルスの潜伏期間は、約10時間から2日(平均1日)です。

主な臨床症状は悪心・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛・一過性の発熱・寒気です。

症状の出現頻度は、表の通りです。

嘔吐から下痢に変わるケースが多いですが、どちらか一方の症状のみか、症状の見られない不顕性感染が30~60%の割合でみられます。

一般的に予後は良好と言われていますが、合併症として、けいれん、腸重積、イレウスなどがあります。高齢者では、吐物による窒息・誤嚥性肺炎などに注意が必要です。

症状

頻度

嘔気 嘔吐 下痢

60~80%

腹痛

50%

頭痛・発熱

20~30%

筋肉痛

25%

咽頭痛

20%

不顕性感染

30~60%

いつまで感染力があるの?職場復帰や登校が可能になるのはいつから?

ノロウイルスは、発症後3日間は大量に便中に排泄されています。

下痢が消失後48時間でウイルス量は減少し、感染性はほとんど消失します。

したがって、下痢消失後、2日間を経過すれば職場復帰や登校が可能となります。

しかし、感染性はほとんど消失してもノロウイルスの便中排泄は下痢消失後2~3週間は続くため、流行シーズン中は常に正しい手洗い・マスク・手袋着用など予防策をとることが必要です。

治療は? 予防するワクチンはないの?

治療は対症療法が主体となります。安静、絶飲食、経口補水液などによる脱水予防が基本です。嘔吐に対しては、必要時ドンペリドンの頓用で対応します。

小児や高齢者では脱水が進行しやすいため、中等度の脱水(5~10%の体重減少、皮膚のツルゴール低下、粘膜乾燥など)では経静脈的に補液を行う必要があります。

ノロウイルスは多くの遺伝子型があり、交差反応がないことからまだワクチンの開発が難しく、実用化には至っていません。

そのため、標準予防策+接触感染予防策をとり、アウトブレイクを起こさないよう、ケアに携わる誰しもが接触伝播を防ぐことができるよう、手技を確立させましょう。

次回は吐物・排泄物の処理を中心に接触感染予防策について記したいと思います。

 

【引用・参考文献】

1)厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A

http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/040204-1.pdf

2)国立感染症研究所感染症情報センター:ノロウイルス

http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html

3)田村英一郎:ノロウイルス感染症.小児看護36(1):23-26,2013

SNSでもご購読できます。

   

   

コメントを残す

*