皆さんは加齢による身体機能の衰えや体力低下を感じたことがありますか?
加齢にはサルコペニアという言葉が大きく関わります。
サルコペニアとは
サルコペニア(sarcopenia)は、サルコ(sarco)の筋肉とペニア(penia)喪失を合わせた意味で、筋肉が失われることによる身体機能の低下を意味しています。
寝たきりの状態で引き起こる廃用症候群と近い意味ではありますが、廃用症候群を起こす要因の一つとしてサルコペニアによるものと言えます。
サルコペニアには加齢による一次性(原発性)サルコペニアと、活動・栄養・疾患による二次性サルコペニアに分類されます。
高齢者の中でも、要介護者にとっては一次性と二次性に当てはまることから、介護分野には大きな問題点となっています。
サルコペニアの有病率は、加齢により大きく上昇していきます。
・70歳未満では、男性10%・女性20%
・70歳以上75歳未満では、男性20%・女性30%
・75歳以上80歳未満では、男性30%・女性35%
・80歳以上では、男性と女性共に50%
75歳未満では約4分の1の有病率であるサルコペニアが、80歳以上になると半分以上がサルコペニアになります。
サルコペニアの原因や診断基準は?
・加齢
・生活リズムの乱れ
・栄養不足・運動不足
・感染症
・パーキンソン病や筋委縮性側索硬化症(ALS)の身体機能に関わる病気
サルコペニアの定義は、筋肉量の減少と、筋力の低下、身体能力の低下が認められた場合に診断されます。
サルコペニアの診断基準として握力と歩行速度を測定します。
・歩行速度は、秒速0.8m以下。
・握力は、男性26kg未満、女性18kg未満。
どちらか片方でも該当する場合には、筋肉量を測定します。
・筋肉量(DXA)は、男性7.0kg/m²未満、女性5.4kg/m²未満
筋肉量も基準値を下回った場合には、サルコペニアと診断されます。
サルコペニアと診断されない場合でも注意は必要です。
1、歩くのが以前に比べて遅くなった。
2、階段を上るときに手すりを使用しなければ上がれない。
3、ペットボトルのキャップが開けにくくなった。
日常生活の中で、3つのうち1つでも該当する場合は、サルコペニア予備群となるため、筋肉を増やすように生活習慣を見直す必要があります。
サルコペニアへの対策と予防
サルコペニアにならないためにはどのようにすればよいのでしょうか?
サルコペニアには、加齢・活動・栄養・疾患の4つのキーワードに対して対策を行う必要があります。
1、加齢
加齢自体は、防ぎようのない事実です。
そのため、加齢による筋力低下を予防することが大切です。
毎日筋肉に刺激を与えることで、加齢による筋肉量の低下を予防することができるため、簡単で負荷の少ない方法で継続して筋肉トレーニングを行う必要があります。
2、活動
活動には、日常生活の中で少しでも外出する機会を増やすことが大切です。
歩くことにより身体機能を維持することができるため、サルコペニアの予防には大切です。
ベッド臥床の時間が長いと身体機能は悪化してしまうため、病気で入院した場合には、早期離床をすることで、サルコペニアの予防をしていきます。
3、栄養
栄養状態の低下により、身体機能は低下していきます。
高齢者は、味覚の変化や料理が難しくなることから栄養バランスが崩れていきます。
適切な栄養管理を行うことが、サルコペニアの予防になります。
低栄養状態の予防として、肉・魚・卵・乳製品のたんぱく質を多く食べるように心がけるとよいです。
4、疾患
病気が重篤化することによりサルコペニアの原因となります。
高齢者で注意しなければいけない疾患として、生活習慣病や不顕性誤嚥はサルコペニアへの第一歩になるため、注意していく必要があります
サルコペニアの治療方法には、運動療法・栄養療法・薬物療法があります。
1、サルコペニアの運動療法
サルコペニアでは、関節拘縮や麻痺の改善を目的とした運動療法が効果的です。サルコペニアの人は、骨粗しょう症や心疾患を抱えている人が多いため、治療と平行しながら運動療法を行うことが大切です。
2、サルコペニアの栄養療法
高齢者では、低栄養や骨粗しょう症を改善することがサルコペニアの治療につながるため、ビタミンDや高たんぱく質・アミノ酸の摂取が必要です。日々の食生活で摂取が難しい場合には、サプリメントや栄養補助飲料を利用していくことで必要な栄養を摂取することができます。
3、サルコペニアの薬物療法
サルコペニアの薬物療法には、ビタミン剤の投与やホルモン剤の投与があります。
サルコペニアを引き起こす筋力の低下や低栄養を改善するために用いられますが、高齢者では副作用も多くみられるため、できる限り運動療法と栄養療法で治療することが望ましいです。
サルコペニアと不顕性誤嚥
サルコペニアは、全身の筋肉に関わっていくため、摂食や嚥下機能に関連する筋力に大きく影響します。
不顕性誤嚥とは、別名「むせない誤嚥」と言われており、加齢による誤嚥を繰り返すことで、気道の知覚が鈍くなることで引き起こります。
不顕性誤嚥により、菌が肺に溜まるため、誤嚥性肺炎や免疫力低下を引き起こします。
誤嚥性肺炎や免疫力低下により、食事摂取が困難となり栄養状態が低下し、サルコペニアを悪化させてしまうため、悪循環となります。
一度悪循環になってしまうと、改善することは難しくなるため、サルコペニアの予防や対策を行うことがとても重要です。
高齢者にとってサルコペニアは、病気の始まりになるため、事前に予防や対策を行うことが大切です。
ケアスタッフ
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