生命保険の補償内容や特約の中に「高度先進医療」「先進医療」という文字を目にします。最先端の医療に対しての補償であることは、何となくイメージできますが、その実際は一体どのようなものなのでしょうか。今回はそんな今更聞けない先進医療についてまとめてみたいと思います。
そもそも「先進医療」って?
日本の医療保険制度において、医療費に関しては診療報酬点数という点数により決められています。1点を10円として算定し、すべての医療行為に関してはこの点数に定められています。この診療報酬の枠には含まれない医療行為に関しては保険外診療の対象となります。俗に言う自費診療です。
美容整形や歯科などでの高額なインプラント治療などが、それらの保険外診療であるといえばイメージしやすいかもしれません。癌の治療などにおいても、保険診療としての診療報酬点数には含まれていない最新の治療が数多く存在しています。これらの治療法に関しても当然、保険外診療となってしまい、高額な医療費の負担をしなければいけない状況にあります。
また保険診療と、保険外診療を同時に行うことは「混合診療」言われ、基本的に実施することは出来ません。この場合は保険診療であっても全てが保険外診療となってしまいます。一般的な保険診療と保険外診療は併用できないということです。そんな中で厚生労働省が導入した制度が高度先進医療、先進医療制度です。これにより先進医療に認定されている保険外診療と保険診療を併用して行うことができるようになったのです。
高度先進医療と先進医療
高度先進医療と先進医療は昭和59年に導入された特定療養費制度、健康保険制度です。制度認可された保険外治療と保険診療の併用を認めた制度です。
先進医療として受けた治療は全額が患者負担となりますが、保険診療に関しては保険診療として算定が可能です。その後、平成18年に健康保険法の一部改正が行われ、健康保険法内の「先進医療」として統合されました。よって現在では「高度先進医療制度」ではなく「先進医療制度」と呼ばれています。
先進医療ってどんな治療?
平成28年5月1日現在、97種類の治療が、先進医療に認定されています。
先進医療はどこでも受けれるものではありません。厚生労働大臣が定める施設基準に適合すると認可された保険医療機関に限定されています。またこの認可を受けた施設は、患者の見やすいとっ頃に治療内容と費用などを掲示し、患者が選択しやすいように配慮しなければなりません。この認可を受けていない保険医療機関で先進医療を受けた場合は、一般的な医療保険などでの対象外となってしまう場合がありますので、注意が必要です。
厚生労働省 先進医療の各技術の概要
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
厚生労働省 先進医療を実施している医療機関一覧
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html
先進医療で多く行われているのは?
癌の治療としてよく耳にする先進医療は「重粒子線治療」「陽子線治療」です。一般的に癌の治療では抗がん剤、手術、放射線治療などが行われます。これらの治療で十分な効果が得られなかった場合や、一般治療と併用して先進医療を行う患者さんが増えてきています。
平成25年度の実績として「重粒子線治療」1,286件、「陽子線治療」2,170件と報告されています。その金額は平均で250万〜300万円と言われています。最も多く実施されている先進医療は「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」です。平成25年度の実績では5,248件が実施されています。
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術=白内障の手術です。一般的な白内障手術では単焦点レンズが使用されますが、そのレンズを多焦点レンズに変更し、水晶体を再建する手術を行う場合が適応となります。この手術を行うことにより、白内障の治療だけでなく、近眼、老眼の回復も見込めます。この治療の金額は平均で50万円と言われています。
先進医療を受けるときの注意点<>
自分の病状には適応しない場合もある
最新の治療とはいえ、その治療が自分自身の病気の治療として適しているかという判断は医師の判断になります。自分自身の判断で先進医療を受けることは出来ません。
施設認可のある施設で受ける
先進医療を受ける場合、その保険医療機関が先進医療の施設基準認可を受けているかを必ず確認してください。認可がなければ先進医療の様々なシステムが受けられません。認可を受けている保険医療機関では施設内に金額なども含めて必ず患者に分かりやすい形で掲示をしていますので、内容もしっかりと確認してください。
医療保険などの契約内容を確認
高額な先進医療の治療を行う場合に、医療保険を使って治療を行う場合も多いと思います。自分自身が加入している保険が先進医療の特約やオプションに入っているかを確認してください。その中で今回自分が受ける先進医療が対象となっているかもしっかり確認する必要があります。保険の内容によっては全ての先進医療が対象となっていない場合もあり、支払い金額に関しても様々です。まずは保険会社に相談してみてください。
医療は日々進歩しています。先進医療には認定されていなくても、数多くの新しい治療法はこの世に存在します。そんな新しい治療法や新しい薬剤の登場で、救われている命も多くありますいます。
先進医療とは患者にとって希望の光となる場合も少なくありません。現在は先進医療として受けている治療が、数年先には一般の保険診療として受けることのできる治療になっているはずです。一人でも多くの患者が自分の望む治療を、納得して受けることができる世の中になるように、様々なシステムも治療同様に進歩していくことに期待します。
ケアスタッフ
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