『刀剣乱舞』(とうけんらんぶ=「とうらぶ」)というものをご存じでしょうか。
ブラウザゲーム(パソコンゲーム)なのですが、簡単にいいますと、実在する刀剣(日本刀、薙刀など)を擬人化したキャラクターを操って、育てていくシミュレーションゲームで、今、若い女性の中で人気が拡大しています。
要はイケメンの男性キャラクターを育てていくのですが、歴史や刀剣という要素が加わっていて、ゲームの枠を超えて各地の歴史館や美術館にも経済効果を及ぼしているものです。
歴女と偉人萌えの拡大
数年前に「歴女」という言葉が流行ったことを憶えているかもしれません。歴女とは幕末・明治維新や戦国時代などの日本史が好きな女性で、それを実在の歴史上の人物を「2次元化」して、マンガやアニメのキャラクターのように趣味の対象とする人たちのことです。
(1)歴女と聖地巡礼
歴女が趣味の1つとして認知されたのは、歴史(日本史)を題材にしたゲームやアニメのヒットと連動しています。
具体的には、
『銀魂』
『戦国BASARA』
古くは
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚』
『信長の野望』
などが好きな女性が、同人的な趣味の中でそのキャラクターたちを表現できる環境が整っていったことと関係しています。
と、難しく書いていても仕方がないので分かりやすく言いますと、
歴史とマンガやアニメが好きな女性が、その趣味を一致させて盛り上がったことによります。
歴史上のキャラクターをイケメンに描いて、そのキャラクター同士で「BL」(ボーイズラブ)を行うなど、「腐女子」の趣向そのままにその趣味を共有することができたわけです。
それは、単に同人誌などの2次元分野にとどまらず、実際の維新志士のお墓を訪れる、歴史記念館などを訪問するなど、その地域へお金を落とす行動として好意的にとらえられました。
こうした、キャラクターゆかりの地を訪問する行動を「コンテンツツーリズム」といいます。
(2)歴史に萌える
イデオロギー的なものを排した歴史を題材にしたコンテンツは、歴女ブームの後も続きました。
これは男性向けですが『艦隊これくしょん-艦これ』も該当します。
「艦これ」は実在した(そして撃沈された)、太平洋戦争中の旧日本軍の戦艦や巡洋艦を、少女に擬人化したもので、その結果として、旧軍港などへの「巡礼者」も増加しています。
日本の文化として
・萌える
・擬人化
というものがあります。「萌え」についてはいまさらいうまでもないことですが、LikeでもLoveでもない、そのキャラクターへの絶妙な行為を表現する用語として定着しています。
擬人化はもっと由来は古く「鳥獣戯画」にさかのぼります。日本の宗教観として、八百万神があるように、さまざまなものに人格を持たせてそれを受け入れる文化的な下地があります。
刀剣や艦隊を擬人化して、それを萌えの対象にすることについて、広く受け入れられるわけです。刀剣についても、思想やイデオロギーを排して、単純にイケメンの擬人化キャラにすることで、多くの支持を広げることが可能になっています。
実は、擬人化の対象は歴史だけではなく、「元素記号」や「家電」をもとにしたキャラクターもいて、その関連コンテンツは大きな経済効果を持っています。
歴史趣味の一般への拡大
はっきりいうと、刀剣乱舞はオタク向けのものです。刀剣をモチーフにしたイケメン男性は現実にいるわけではないので、あくまでマンガやアニメのキャラクターのように、女性オタクの趣味の対象の1つとしてとらえられています。
しかし、刀剣乱舞のブームはそれだけに限らないようです。
それはいきなり、マンガやアニメになるのではなく、「刀剣」という美術品にワンクッションおくことで、通常のオタク層に限らずそのコンテンツに入ることを可能にしています。
「艦これ」の場合、ミリタリー的な色彩もあるので男性であってもハードルが高いのですが、
刀剣乱舞で擬人化される刀剣は、歴史上の武器というよりも美術品、骨董品の色彩が強いので、心理的なハードルが低いのです。
人の生死や血なまぐささがないのですね。
「歴史×男性」という属性は、非常に女性受けがよく、これは現実のリアル男性ではないことで、生々しい恋愛などのにおいが可能な限り排除され、純粋に萌えの対象になることができます。
刀剣乱舞をきっかけに、歴史に興味を持つ人も増えています。実際にその刀剣が展示されている美術館を訪問する、現実の刀鍛冶の人を訪問するといったことが起きています。
メインカルチャーにはなり得ない分野ではありますが、実際の歴史とオタク的な萌えが融合して、新しいカルチャーを開かせていると言っても良いのではないでしょうか。
歴史はどちらかというと男性の趣味と思われがちでしたが、このようなブームによって女性であっても(オタク趣味がなくても)、その趣向についてオープンにできるようになりました。実際、婚活パーティなどでも「歴女」というのはポイントが高いようです。
もし、歴史が好きな方がいらっしゃいましたら、一度「刀剣乱舞」に触れてみてはいかがでしょうか。
ケアスタッフ
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